貧血とは
貧血とは、血液中のヘモグロビンの量が正常値より少なくなった状態です。
貧血の基準は
成人男性 | 13g/dl未満 |
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成人女性 | 12g/dl未満 |
80歳以上 | 11g/dl未満 |
妊娠中 | 11g/dl未満 |
です。特に女性の方は月経状況によって変動します。
ヘモグロビンは血液中の血色素で、鉄を含む血色素であるヘムと、蛋白質のグロビンで構成されています。ヘムは酸素と結びつく作用があり酸素の運搬を担っています。
貧血は、酸素を運搬するヘモグロビンが減ってしまい、全身の筋肉や臓器に十分な酸素が送られていない状態を意味します。
貧血の症状
全身の臓器に酸素が行き渡らなくなるため様々な症状が起こります。
- めまい、ふらつき
- 息切れ、疲れやすい、だるい
- 味覚がおかしい
- 顔色が悪い
- 口角炎や口内炎ができやすい
貧血が進むと、充血しているはずの眼瞼結膜(あかんべーの目の下の部分)が全体的に白くなっていることがあります。そのような場合は医療機関に受診し、血液検査をしてもらいましょう。
貧血の原因
①小球性貧血(鉄欠乏性貧血)
もっとも多いのは鉄欠乏性貧血です。ヘモグロビンの材料は鉄ですので、鉄が不足すると血液(赤血球)が足りなくなります。小さく、働きのよくない赤血球になってしまい、酸素をうまく全身に運べなくなり、息切れ、疲れやすさが起きてきます。
鉄の代謝
鉄の1日の推奨摂取量は、男性7.5mg, 女性11mg(月経ありの場合)です。摂取した量のうち約10%程度が吸収されます。
体内では約4000mgの鉄分があり、その70%はヘモグロビンです。残りは肝臓や筋肉などに蓄えられていて、体内鉄の99%が脾臓で再利用されます。何らかの原因で鉄代謝のバランスが崩れることで鉄欠乏性貧血を起こします。
鉄欠乏性貧血の原因
- 消化管出血
- 胃十二指腸潰瘍や胃癌などの上部消化管出血
- 大腸ポリープ、癌、痔などによる下部消化管出血
などは比較的多く見られます。便が黒い、赤いなどの症状がありましたら医師に相談しましょう。
- 月経や子宮筋腫などの婦人科疾患
女性は月経による出血で貧血になりやすいだけでなく、体内に蓄えられている鉄の総量が少ないため、日頃から鉄分摂取を心掛けましょう。 - 偏食・ダイエットによる摂取不足
偏った食生活や、食べる量が減ると鉄の摂取量も不足して貧血を起こしやすくなります。ダイエットで食事を制限する思春期の若者や、食が細くなる高齢者は特に気をつけましょう - 成長期、妊娠・授乳期などの需要増加
成長期や妊娠・授乳期は、体が必要とする鉄が増えます。結果的に、通常の摂取量では不足しがちになります。
②大球性貧血
主にビタミンB12や葉酸が欠乏することで起こる貧血です。
胃切除後、萎縮性胃炎などに伴うビタミン欠乏、アルコール多飲などの栄養障害があるとDNAの合成が障害され、幼弱で体積の大きな赤血球になります。うまく成熟できずに骨髄内で細胞死が起こり無効造血となります。
大球性貧血では重症になるまで症状に気づかないことがあります。下痢や食思不振、舌炎などとともに、末梢神経障害や歩行不安定などの神経症状も認めることがあります。
さらに栄養障害では、銅や亜鉛欠乏が貧血を起こすこともあります。
③正球性貧血
赤血球が小さくも大きくもならないタイプの貧血で、慢性腎臓病、関節リウマチ、溶血性貧血、癌、血液疾患などのさまざまな原因疾患を考える必要があります。
- 網状赤血球が増加しているパターン
・・・溶血性貧血など - 網状赤血球が増加していないパターン
・・・腎性貧血、造血器腫瘍、血液疾患
当院の貧血の検査と治療
①血液検査
- 当日結果が出る迅速血液検査で貧血の有無や重症度を確認します。
- 採取させていただいた検体で他に必要な項目を測定し、原因精査を行います。
小球性貧血:血清鉄、フェリチン、UIBC、網状赤血球
大球性貧血:ビタミンB12、葉酸
正球性貧血:網状赤血球、エリスロポエチン
等を適宜追加します。
②原因検索と治療
貧血の原因によって治療は異なります。たとえば鉄欠乏性貧血の場合、経口鉄剤を投与すると同時に、胃十二指腸潰瘍の有無、痔や大腸癌の有無などの消化管検索や、子宮筋腫などの婦人科的検索、偏食の有無など原因検索を行います。当院では内視鏡はできませんので、近隣施設へ紹介させていただきます。