気管支喘息とは
気管支喘息とは、気管が慢性的に炎症を起こして過敏になり、何らかの刺激によって細くなり、咳、喘鳴(ゼーゼーいう呼吸)、呼吸困難、といった症状が発作性に起こる病気です。
- 特徴的な症状
- 可逆性の気流制限
- 気道の過敏性亢進
- アトピー素因(成人喘息では参考程度)
- 喀痰中の好酸球等の気道炎症の存在
- 類似した症状を示す疾患の除外
などから総合的に診断します。
喘息のリスク
喘息の発症・増悪にはさまざまな因子があります。
- 個体因子:遺伝子素因、アレルギー素因、気道過敏性、性差
- 環境因子:
- 発病因子:アレルゲン、ウイルス、その他(大気汚染、喫煙、食品、寄生虫、薬物)
- 増悪因子:アレルゲン、大気汚染、呼吸器感染症、運動、喫煙、気象、食品、薬物、 ストレス、 刺激物質、二酸化硫黄、月経・妊娠、肥満、アルコール、過労
アレルゲンを避けることが重要
成人喘息では必ずしも単一の原因アレルゲンが特定できるわけではありません。しかし、環境を整えることによって発作を抑え、薬を減らすことができる場合もあります。
①ハウスダスト、ダニ
室内のチリダニの増加が問題となっています。室内の密閉化、室内家具の増加、カーペット、大掃除がない、窓の開閉が少ない、等が原因です。
掃除や換気はもちろん大切ですが、中でも寝具の対策が重要です。睡眠中に吸い込むダニアレルゲンの大半はフトンから発生することがわかっています。防ダニ布団カバーや布団乾燥機などを検討しましょう。
②ペット
アレルゲンとなるものは主にイヌ、ネコ、ハムスターですが、特にネコに感作されている場合が多いです。喘息がある場合は、室内での飼育はお勧めできません。
喘息の検査
①肺機能検査
発作時には1秒率が減少します。
1秒率とは、肺活量のうち1秒間に吐ける割合で、通常は70%以上が正常です。
②気道可逆性試験
発作ない時でも喘息があると、気管支拡張剤を吸入すると肺機能がよくなります。これを確認するため短期作用型の気管支拡張剤の吸入し、15~30分後に肺機能検査を行います。
③ピークフロー
自宅でも出来る簡易の肺機能検査器(ピークフローメーター)を使って、思い切り息を吐いた時の空気の速さを測定します。時間や場所を選ばず簡単に検査でき、治療効果も自分で確かめることができます。
④呼気NO検査
呼気中に含まれる一酸化窒素(NO)を測定する検査です。気道に炎症が起こると、気道上皮で一酸化窒素(NO) が産生されます。呼気中の一酸化窒素(NO)濃度を測定することで、気道に炎症があるかどうか、またその程度を評価することが出来ます。
⑤アレルギー検査
好酸球やIgEの増加がないかを血液検査で調べることができます。検査項目には限りがあるため、重要なものや頻度の高いものを検査します。C-PAC16やVIEW39といった検査です。これらは保険適応の場合は、3割負担で約4,300円です。その他に診察料が別途かかります。
C-PAC16アレルゲン(鼻炎・喘息用) | VIEW アレルギー39 |
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喘息の治療
喘息の治療には2通りあります。
- 発作時の治療
- 長期管理治療
喘息発作時には、素早く気管支を拡げる作用のある吸入薬を用います。重症の発作については点滴治療が追加になることもあります。
一方で、喘息患者様の気道では、症状がないときでも炎症は起きており、徐々に進行しています。そして発作を起こせば起こすほど、気管支が肥厚し固くなり、どんどん重症化してしまいます(リモデリング)。
喘息の治療では、気道リモデリングを抑えるために、長期管理治療が大切になります。
そのうえで、症状が安定していれば、3~6か月ごとに治療をステップダウンすることも考慮できます。
吸入ステロイド薬(ICS)
吸入ステロイド薬は、炎症を抑える効果があり、長期管理薬の基本となる薬です。全身の副作用は殆どありませんが、声の掠れや口内カンジダ症などの局所の副作用があります。
長時間作用性β2刺激薬(LABA)
β2刺激薬は、交感神経を刺激して気管支を拡げる薬です。効果が速くあらわれる短時間作用性β刺激薬(SABA)は発作治療薬として用いられますが、効果が長く続くLABAは長期管理薬として用いられます。吸入ステロイド薬と一緒に用います。
長時間作用性抗コリン薬(LAMA)
アセチルコリンとよばれる物質の作用を抑え、気管支を拡げる薬です。長期管理薬として使用する際は、吸入ステロイド薬と一緒に用います。
ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
アレルギー反応によって生じるロイコトリエンの働きを抑えることで、気管支を拡げる作用と、炎症を軽度抑える作用をもつ薬です。
テオフィリン徐放製剤
気管支を拡げる作用と、炎症を軽度抑える作用の両方をもつ薬です。過剰に使用すると副作用(動悸、震え、吐き気など)が出るため慎重に投与します。
生物学的製剤(注射薬)
炎症に関わる物質(IL-4、IL-5、IgEなど)の働きを抑える新しいタイプの薬です。中~高用量の吸入ステロイド薬や他の薬と組み合わせて使用します。
とくに重症で吸入ステロイド薬が効きにくいタイプの喘息に使用することがあります。使用する経口ステロイド薬の量や発作回数を減らす効果が期待できます。
経口ステロイド薬
吸入ステロイドとは異なり、喘息の発作時や重症の喘息に使用する薬です。効果は強力ですが、副作用が多く、感染症、副腎皮質の機能不全、糖尿病、消化管潰瘍、抑うつ、骨粗鬆症、緑内障など全身の副作用が出ることがあり、長期の使用は避けたい薬です。
ステロイド薬(点滴)
中等度以上の喘息発作が起きていて治まらない場合、すでに飲み薬のステロイド薬を使用している場合は、ステロイド薬の点滴を行います。