心臓弁膜症とは
心臓には、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋があり、順番に血液が流れています。それぞれの部屋の間には逆流しないように「弁」がついています。心臓弁膜症とは、弁に何らかの異常が生じ、心臓のポンプ機能に様々な支障をきたす状態を言います。
心臓弁膜症の種類
心臓弁膜症は、弁が十分に開かず血液が流れにくくなる「狭窄症」と、弁がきちんと閉じず血液が逆流する「閉鎖不全症」に分けられます。
狭窄症
僧帽弁狭窄症
左心房と左心室の間にある僧帽弁が石灰化により固く狭くなり、血流が妨げられる病気です。幼少期のリウマチ熱の後遺症としてよくみられます。進行すると心不全をきたし、運動や妊娠、甲状腺疾患や貧血など他の疾患に罹患した際に息切れや呼吸困難が起きて指摘される場合が多いです。
僧帽弁狭窄症はこちら大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症とは、大動脈弁の開きが悪くなり狭くなることで、心臓から大動脈に血液が流れにくくなる病気です。加齢とともに有病率が増え、80歳以上では7%程度の方に大動脈弁狭窄症を認めるとする報告もあります。胸痛、失神、心不全などの自覚症状が出始めると平均余命は2~3年程度と言われ、予後の悪い疾患です。
大動脈弁狭窄症はこちら閉鎖不全症
僧帽弁閉鎖不全症
左心房と左心室の間にある僧帽弁が何らかの原因できちんと閉じなくなり、血液の一部が左心房に逆流してしまう病気です。僧帽弁は、左室および乳頭筋、腱索、弁尖、弁輪、左房によって総合的に機能しています。このどれかの障害が出ると、僧帽弁逆流が生じてしまいます。大動脈弁狭窄症と同様に加齢とともに有病率が高まることが報告されています。
僧帽弁閉鎖不全症はこちら大動脈弁閉鎖不全症
左心室と大動脈の間にある大動脈弁が何らかの原因できちんと閉じなくなり、血液の一部が左心室に逆流してしまう病気です。リウマチ性や加齢性変化のように弁自体に器質的変化をきたす場合と、弁は問題なくても上行大動脈が拡大してしまい大動脈弁が離開して逆流が起きる場合があります。
大動脈弁閉鎖閉鎖不全症はこちら心臓弁膜症の症状
心臓弁膜症の初期は代償機転が働くため無症状のことが多いですが、進行するとさまざまな症状が出てきます。
- 疲労感、倦怠感
- 動悸、息切れ
- 呼吸困難
- 胸痛
- 足の浮腫み
- めまい
- 失神
心臓弁膜症は心不全の原因になります。弁膜症が進むと心臓のポンプ機能に影響をおよぼし、正常に働かなくなり心不全に至ります。上記症状があれば、早めの受診が大切です。
心臓弁膜症の検査方法
心電図
心電図は心臓の電気的な活動を記録する検査です。心房細動などの不整脈の有無を確認します。
胸部レントゲン検査
心臓の拡大、肺うっ血、胸水の有無などを確認し心不全の有無を確認します。
血液検査(脳性ナトリウム利尿ぺプチド:BNP)
心室への負担が高まると分泌され心不全の診断に有用です。健診のオプションとして検査することができます。
心エコー検査
超音波を使って心臓の状態を探ります。心臓弁膜症では最も重要な検査です。心機能の評価や、弁の状態の評価、重症度評価などを行います。より詳細に検査する場合は、胃カメラのように探触子を飲み込んでもらい、食道の内部から心臓を評価する、経食道エコー検査を行います。
心臓弁膜症の治療方法
軽度であれば心臓の負担を減らす薬や不整脈を予防する薬、血栓を予防する薬を用います。
中等度~重度の心臓弁膜症で、呼吸苦や浮腫といった心不全症状が出ている場合は外科手術を検討します。
外科手術では、弁形成術や弁置換術などが行われます。体への負担が少ない手術方法や、ロボット支援による手術など開発されています。
最近では一部の弁膜症(大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症など)についてカテーテルで治療できるようになり、より低侵襲な治療として注目されています。
心臓弁膜症の手術後のフォローアップ
心臓弁膜症の術後はフォローアップも大切になります。弁形成術や弁置換術後も、弁機能不全や心機能が低下してしまうケース、また他の弁膜症が進んでしまうケースもあります。症状がなかったとしても油断せずに、定期的なフォローアップを受けてください。
手術後も、手術を行った病院で1~3年に1回程度フォローされることが多いと思いますが、当院でも術後安定した状態のフォローアップは可能です。エコー検査等含めて日常的にフォローを行いますので、早期に異常を発見できる可能性が高まります。異常が見られた場合などは心臓外科医とスムーズな連携を行います。