循環器内科は、心臓や血管の病気をみる診療科です。内科に含まれますが、薬物療法だけでなくカテーテル治療などの血管内治療や、ペースメーカーの植込み手術なども行います。心臓を診るというイメージから重大な病気になった時にかかる科というイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、生活習慣病や動脈硬化など循環器疾患の原因となる病気についても、専門的な検査や治療が可能です。身近な慢性症状から、迅速に治療をしないと命にかかわる危険な疾患まで、循環器内科では幅広い診療を行っています。

循環器内科の主な疾患

動脈硬化性疾患

動脈硬化はメタボリックシンドロームや喫煙などの危険因子が重なると発症しやすくなります。突然発症して重篤な結果をもたらす病気も多いため、動脈硬化の予防は非常に大切です。

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心臓弁膜症

心臓弁膜症とは、心臓内にある「弁」に何らかの異常が生じる病気です。大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁の4つの「弁」がありますが、心不全などの問題になることが多いのは、大動脈弁疾患と僧帽弁疾患です。

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不整脈

不整脈とは、正常以外の異常な脈拍のことです。その中には様々な病気が含まれますが、大きく分けると、「頻脈性不整脈」「徐脈性不整脈」「期外収縮」に分けられます。不整脈の治療方針は、症状と心機能から決めていきます。

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心筋症

心筋症は、心筋そのものの異常により、心臓機能に異常をきたす病気です。特に原因が明らかではない「特発性の心筋障害」を心筋症と呼びます。代表的な病気には、肥大型心筋症、拡張型心筋症などがあります。初期には無症状のことも少なくありませんが、時に不整脈や心不全を起こして問題になります。

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心不全

心不全は、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。さまざまな原因、病気で起こる症候群です。高齢化に伴い心不全患者は増加しており、心不全パンデミックの危機が叫ばれています。病院での患者様の受け入れが困難になったり、莫大な医療費がかかることなど、社会的な問題が起こる可能性があります。日常生活において心不全を予防し、再発させない治療が大切です。

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静脈血栓塞栓症

足の静脈や肺の血管に血栓が詰まることで、突然の呼吸苦や失神が起き、時に致命的になる病気です。エコノミークラス症候群とも呼ばれます。長時間の旅行や足を骨折で動かせないと、血液がうっ滞し血栓が出来やすくなります。妊娠や低用量ピルの使用に伴って起こることがあり、若い方でも注意が必要です。

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こんな時には循環器内科にご相談ください

  • 胸が苦しい・胸が痛い
  • 背中や左肩・腕が痛む
  • 動悸がする・脈が乱れる
  • 妙に疲れやすい
  • 足が浮腫む
  • 生活習慣病が心配
  • 動脈硬化が心配

といった症状は、心臓疾患の疑いがあります。

また、いままで出来ていた運動や階段の上り下りで苦しくなったり、急に立ち眩みがして失神したなどの症状は、心臓や血管の問題で起こりやすい症状であり、早期に循環器内科に受診することで、大きな発作の予防に繋がることも多くあります。

同様に高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病があって動脈硬化が気になる場合や、脳血管障害の原因になる血管の狭窄・閉塞のリスクを知りたい場合にも、循環器内科での精査で対応することができます。

循環器内科の検査

当院で行う検査

胸部レントゲン検査

胸部レントゲンのイメージ写真

心臓の拡大、肺うっ血、胸水の有無などの心不全のサインを確認します。以前に撮られた画像と比較することも重要です。

心電図検査

心電図のイメージ写真

心臓の電気的な活動を記録する検査です。心筋梗塞や心肥大、不整脈の有無を確認します。

運動負荷心電図検査

運動負荷心電図のイメージ写真

運動などで心臓に負荷がかかると現れる胸痛・動悸・息切れなどの症状を再現し、その時の心電図変化などをみて、狭心症や不整脈の診断を行う検査です。エルゴメータ(スタンド式自転車のペダルをこぐ器具)を使って運動します。

ホルター心電図検査

ホルター心電図のイメージ写真

電極を胸につけ、24時間心電図を記録する検査です。長時間心電図を記録して不整脈の発作が起きたときやその前後の状態を記録します。

心エコー検査

心エコー検査のイメージ写真

超音波を使って心臓の状態を探ります。心機能の評価や、原因疾患の診断と重症度評価などを行います。状態が変化した場合や治療の前後など、経時的に検査を行うことで治療の効果を確認したり、予後評価を行います。

血管エコー検査

超音波を使って頸動脈や下肢の動静脈を探る検査です。プラークによる狭窄や閉塞、血栓がないか調べることができます。ドップラー検査で血流の状態を詳しく調べることができます。

血圧脈波検査

上腕と足首の血圧を測定して、その比(ABI:ankle brachial index)から動脈が狭くなっていないかどうかを調べます。正常では足の血圧の方が上腕の血圧より高いのですが、下肢動脈が狭くなる閉塞性動脈硬化症では、足の血圧が上腕の血圧より低くなります。閉塞性動脈硬化症は、心血管疾患や脳血管疾患などの合併も多くみられることから、早期発見は重要です。

心筋マーカー測定検査

心筋梗塞や心不全では、心筋細胞からさまざまな酵素が血液中に漏れ出るので、それを調べます。

心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)

心筋梗塞の発症1~2 時間後から上昇してきます。迅速診断法により、発症2時間以内の超急性期心筋梗塞の診断が可能です。

心筋トロポニン

心筋梗塞の発症3~6時間後から上昇し始め約2週間は検出可能です。発症後数日経た心筋梗塞の診断も可能です。

クレアチンフォスフォキナーゼ(CK)

CKとその分画であるCK-MBという酵素は、心筋梗塞発症の4~5時間後から血液中に増えてきます。

脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)

心臓を守るために心臓自体(心室)から分泌されるホルモンです。心臓への負担の程度を知ることができます。心不全の早期発見に役立ちます。

病院で行う検査

心臓CT検査

造影剤を静脈注射し、心電図と同期させながらCTをとることで、冠動脈狭窄の有無を診断します。短時間で心臓の断面を撮影し、三次元画像で表わすことが可能です。但し脈の速い方や不整脈のある方、冠動脈石灰化が強い方では評価が難しい場合もあります。

心臓MRI検査

MRIはCTと異なり放射線被ばくの心配がありません。造影剤を使わずに心臓の動きを解析し、冠動脈の評価を行うことが可能です。さらに造影剤を使用すれば心臓組織内の変化やダメージを検出でき、より詳細な診断が可能です。

心臓核医学検査

放射性物質で標識した薬剤を注射して心筋の血流の状態を評価する検査です。運動負荷や薬物負荷試験と組み合わせることで、より詳細に障害心筋の有無や範囲を評価できます。

心臓カテーテル検査

カテーテルという細長い管を手首や肘、足の付け根の動脈に通して心臓まで挿入し、造影剤を注射して冠動脈のX線撮影を行います。冠動脈疾患を診断するのに最も正確な評価が出来る検査です。詰まって狭い箇所が見つかった場合は、検査に引き続いてその場でカテーテル治療を行う場合もあります。また、肺動脈にカテーテルを通して圧力を直接測定したり、少量の心臓の筋肉を採取したりする生検も行います。

当院の循環器内科の特徴

循環器内科のイメージ写真

心臓・血管に関わる疾患に対して高度な専門性と知識を持った、循環器専門医、心血管インターベンション治療専門医が診療にあたります。中規模病院レベルの検査機器を揃えており、詳細かつ迅速な検査を行うことで、リアルタイムなデータに基づいた診断と治療方針の決定が可能です。

また当院では、心臓の病気で大きな病院におかかりの患者様が落ち着かれた後の管理についても積極的にお引き受けしております。

慢性心不全や虚血性心疾患、弁膜症、不整脈といった心臓疾患は手術や服薬治療で状態が安定していても、生活習慣の変化や過労などによる負荷などで急性増悪をおこすことがあります。この急性増悪を防ぐために、専門医によるきめ細かい診察、定期的な心機能の検査や心不全マーカーの検査などがとても大切になります。

とくに心不全は急性増悪を繰り返す度に心臓機能が悪化していくことが知られております。漫然と同じ薬を続けるだけではなく、患者様一人一人の状態に合わせて投薬治療を変化させていくことが大切なのです。

心臓のかかりつけ医として、皆様のお役にたてれば幸いです。