花粉症とは
花粉症とは、スギやヒノキなどの植物の花粉が原因となって、くしゃみ・鼻水などのアレルギーを引き起こす病気です。日本人の約40%がスギ花粉症だと言われています。
一方で、季節に関係なく鼻炎などのアレルギー症状が続く方もいます。ハウスダストやゴキブリ、ペットの毛など、アレルゲンが一年中ある場合は、通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれます。
最近、花粉症と通年性アレルギー性鼻炎の両方に悩む人や、複数の花粉に反応する人も増えています。ほぼ一年中くしゃみ・鼻水・鼻づまりや目のかゆみ等に悩まされるという方も少なくありません。
花粉症の症状とメカニズム
- 鼻の三大症状:くしゃみ・鼻水・鼻づまり
- 目の症状:かゆみ・充血・涙
- その他:喉のかゆみ、皮膚のかゆみ、熱感、倦怠感、眠気、頭痛
が代表的な症状です。
花粉症が起こるメカニズムを示します。
- 体に花粉というアレルゲンが侵入すると、リンパ球が異物と認識し排除しようとします。
- 花粉に対するIgE抗体と呼ばれる物質が作られ、肥満細胞の表面に結合します。
- 再び体内に花粉が入ると、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面にあるIgE抗体と結合します。
- その結果、肥満細胞からヒスタミンなどのアレルギー原因物質が分泌され、目や鼻に入り込んだ花粉を涙や鼻水で洗い流し、くしゃみで吹き飛ばそうとするのです。
口腔アレルギー症候群について
花粉症の患者様の中には、食物アレルギーを合併している方もいます。たとえば、スギ花粉症の患者様ではトマトを食べた際に、シラカバ花粉症の患者様では、リンゴやモモを食べた際に、喉や口元に痒みや腫れを生じることがあります。
これは口腔アレルギー症候群と呼ばれるもので、花粉に含まれるアレルゲンとトマトに含まれるアレルゲンの構造が似ているために引き起こされるのです。
食物に含まれるアレルゲンは、胃や腸で分解されやすいために、口腔のみの症状で治まることが多いのですが、なかには重篤なアナフィラキシーショックを起こすケースもあります。
花粉 | 飛散時期 | 食物の例 |
スギ | 2~4月 | トマト |
---|---|---|
シラカバ | 4~6月 | リンゴ、サクランボ、モモ |
イネ科 | 5~6月 | トマト、メロン、スイカ、オレンジ |
ヨモギ・ブタクサ | 8~10月 | メロン、スイカ、セロリ |
対策は・・・
花粉症で口の中にも症状がある場合には、医療機関でアレルギーの原因となる食物を確認し、避けることが基本になります。ただ、口腔アレルギーを起こす食物のアレルゲンは熱に弱く、加熱すれば食べることができることもあります。症状のあらわれ方にもよりますので、医師に相談してみましょう。
花粉症の検査と診断
①問診
花粉症の問診では、
- 症状が始まった時期
- 症状の内容や強さ
- ほかのアレルギーの有無(アトピー性皮膚炎や気管支喘息)
- 家族のアレルギーの有無
などを確認します。
花粉症の治療は、その症状や重症度によって使用する薬が異なる場合があります。事前にどんな症状があり、どの症状が一番つらいかなどを把握し、医師に伝えましょう。
②特異的IgE抗体検査(血液検査)
特異的IgE抗体検査とは、アレルゲンに対するIgE抗体が血液中に存在するかを調べる検査です。
IgE抗体とアレルゲンが結合すると、ヒスタミンなどが放出されアレルギー症状が引き起こします。
そのため、どのような物質に対するIgE抗体があるかを調べることで、原因が花粉なのか、花粉の場合はどんな種類の花粉なのかを判別するのに役立ちます。
C-PAC16やVIEW39といった検査があり、これらは保険適応の場合は、3割負担で約4,300円です。その他に診察料が別途かかります。
C-PAC16アレルゲン(鼻炎・喘息用) | VIEW アレルギー39 |
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花粉症の治療
花粉症の治療薬には下記のように様々な種類がありますが、治療の中心は第2世代抗ヒスタミン薬です。しかし鼻閉型には効果が弱いという弱点があるため、その場合は抗ロイコトリエン薬と点鼻噴霧用ステロイド薬を用います。
頻繁に鼻汁や鼻閉があって日常生活に影響が大きい中等症以上の場合には、各種治療を組み合わせて治療を行います。さらに重症の場合には2週間または4週間おきに抗IgE抗体薬を皮下注射する治療法があります。
- 第2世代抗ヒスタミン薬
- 抗ロイコトリエン薬
- 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬
- 抗IgE抗体薬
- ケミカルメディエーター遊離抑制薬
- Th2サイトカイン阻害薬
- 鼻噴霧用ステロイド薬
- 経口ステロイド薬(短期)
- 漢方薬
第2世代抗ヒスタミン薬にも様々な薬剤があります。花粉症に対する効果と、眠気などの副作用を天秤にかけて、自分に合った治療薬が選択できるようになってきています。
毎年症状が出ている方は症状が出る前からの治療をお勧めします。
花粉症は、症状が重くなると治療効果を実感しにくくなります。症状が出る前、または花粉が飛散する前から治療を行う初期療法は、症状の重症化を防ぐことができるとされています。
特に症状が重い方は初期療法を受けることで、楽にシーズンを過ごすことができる可能性があるため、早めの受診をお勧めします。また、アレルギー検査は治療開始時期の目安も分かりますのでお勧めです。
舌下免疫療法
花粉症の治療は、症状を一時的に抑える対処療法が中心でしたが、舌下免疫療法は体質改善による根治治療となります。治療期間は3年~5年と比較的長いですが、症状が全く出なくなる(又は軽減される)、必要な飲み薬が減る、などが期待できます。
舌下免疫療法は、アレルゲンを配合した治療薬を毎日少量ずつ摂取することで免疫力を高め、アレルギー反応が起こりにくい身体を作るアレルゲン免疫療法の一種です。
お薬をご自身で舌の下に含み、しばらくしてから飲み込むだけですので、ご自宅でも継続しやすい治療です。
スギ花粉とダニ(ハウスダスト)アレルギーの2種類が免疫療法の対象です。
臨床試験の結果、約80%の方に有効性が示されています。約20%の方は症状が出なくなり、約60%の方は症状の改善効果を認めました。
一時的な効果ではなく、永続的な効果が期待できる治療法です。毎年のスギ花粉症やハウスダストアレルギーの症状で悩まれている方には検討して頂きたい治療法です。
舌下免疫療法がおすすめな方
- アレルギー症状がとても強い方
- 薬を飲むと眠くなったり、胃腸症状が出たりと副作用が気になる方
- 治療薬がたくさんあり、薬を減らしたい方
- アレルギー症状が問題となる仕事の方
- アレルギーに悩み続けることが嫌な方
- 受験を控えている方
- 将来、妊娠した際に薬が使えず辛いことが不安な方
舌下免疫療法を受けられない方
- 5歳未満、65歳以上の方
- 現在妊娠中や、近い将来、妊娠を希望されている方
- 癌や免疫関係の病気がある方
- ステロイド薬を投与されている方
- 重い気管支喘息の方
舌下免疫療法のスケジュール
来院1回目(初診)
アレルギー検査を受けていただきます。
3年以内のアレルギー検査結果をご持参いただければアレルギー検査は不要です。
(12~5月はスギ花粉症の新規治療を開始できません。)
来院2回目(初回投与)
検査の結果、スギ花粉症またはダニアレルギーが確定した場合、初回の舌下免疫錠を処方します。
医師の指導の下、診察室で舌下免疫錠を服用していただきます。その後、30分待機室で経過を観察させていただき、副作用等の異常が無ければ帰宅していただきます。
その後、1週間はご自宅で毎日舌下免疫錠を服用していただきます。
来院3回目
1週間後の再診時、ご自宅での様子や副反応の有無を伺います。特に問題が無ければお薬の量を増やし、ご自宅での服用を継続いただきます。
ここで14日分処方します。これ以降は月に一度の定期受診となります。ただし副反応等の状態によっては、医師の判断により2週間後に再診いただく場合もあります。
舌下免疫療法の費用
健康保険が適用されます。
初診時は3割負担の方で約6,000~7,000円ほどかかります(View39検査費用含む)。
定期的な治療費は約2,000~3,000円となります。