背中の痛み
背中や腰の痛みは、基本的には筋肉や骨の問題(整形外科の領域)であることがほとんどです。安静にしていると自然に良くなる場合もあり、だんだん症状が軽くなるようなら、しばらく様子をみてもよいでしょう。
ただし、中には重篤な病気が隠れていることもあります。とくに高血圧や糖尿病などの動脈硬化のリスクがある場合には、心筋梗塞や大動脈解離といった重篤な疾患も考慮する必要があります。
背中の痛みのチェックポイント
痛みの性質や部位、持続時間、生じた状況、その他の症状などは、正確な診断をするうえで大切な情報となります。
①症状の有無をチェック
- どのような痛みか(痺れ感、押して痛む、殴打されたような、など)
- どのようなときに起きたか(突然おきたか、安静時や労作時におきたか、など)
- どれくらい続いているか
- 呼吸や姿勢、労作で痛みは変化するか
- その他の症状はあるか(発熱、咳・痰、冷汗、吐き気、失神など)
②病歴をチェック
- 痛みが起きる原因に心当たりはあるか(無理な姿勢や動き、など)
- 背中や腰を酷使する仕事や趣味はあるか
- 他に通院している病気はあるか(生活習慣病など)
- 健康診断で指摘されていることはあるか
- 飲んでいる薬やサプリメントの種類
- 喫煙しているか
- 生活で大きな変化や精神的ストレスはあるか
背中の痛みに関連する病気
急性腰痛症(ぎっくり腰)
重い物を持つなどした時に、急に起こる強い腰痛や背中の痛みです。
椎間板ヘルニア
背骨の間のクッション材である「椎間板」が変形して飛び出し、神経を圧迫する病気です。重い物を持ったり悪い姿勢で負荷がかかる作業をしていると、起こりやすくなります。
脊柱管狭窄症
背骨そのものが変形突出してしまい脊柱管が狭くなった状態のことを指します。脊柱管が狭窄すると中を走る神経が圧迫されます。
脊椎圧迫骨折
脊椎圧迫骨折は、上下方向からの力が加わって生じる背骨の骨折です。高齢者や骨粗鬆症があると骨が脆くなり、咳や寝返りなどの軽い負荷で骨折を起こすケースもあります。
心筋梗塞や大動脈解離
心筋梗塞とは、心臓を栄養している冠動脈が詰まって血液が流れなくなり、心筋が死んでしまう病気です。大動脈解離とは動脈が裂けてしまう疾患です。どちらも命に関わる病気で、今まで経験したことがないような強い痛みが突然生じ15分以上続きます。異常な激しい痛みを自覚したら医療機関へ受診してください。
心因性の疼痛
原因がはっきりしない背中や腰の痛みもあります。抑うつ気分や、食欲や睡眠などのライフスタイルの変化がきっかけとなって痛みが出ている可能性があります。
背中の痛みについての検査
まず心筋梗塞や大動脈解離などの重大で命に関わる疾患がないかを確認します。
12誘導心電図検査
心臓の電気的な活動を記録する検査です。心筋梗塞の診断には必須の検査です。
心臓超音波検査(心エコー検査)
超音波を使って心臓や動脈の状態を探る検査です。心臓の大きさ、心筋の動き、弁の機能、心内血栓などを評価します。また大動脈解離を疑う所見がないかを確認します。
血液検査
心筋トロポニンや心筋逸脱酵素、D-Dimerを調べて、心筋梗塞や大動脈解離の可能性を探ります。
胸部レントゲン検査
心臓や肺、骨の異常を調べます。心拡大や縦郭拡大がないか、背骨の側弯がないかを確認します。