脳卒中とは

脳卒中は、脳血管に障害がおきる病気の総称で、主に脳梗塞、脳出血、くも膜下出血のことを指します。

大動脈瘤のイメージ

脳卒中は、悪性新生物、心疾患、老衰に続き日本人の死因第4位です。
また一命を取り留めたとしても後遺症が残ることが多く、要介護状態や寝たきりの主要な原因の1つです。

65際以上の要介護者の性別に見た介護が必要となった主な原因
出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」(令和元年)
令和4年版高齢社会白書(全体版)健康・福祉 第1章第2節2

脳卒中の発症リスクを高める原因としては、高血圧、心房細動、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満などがあげられます。

脳卒中は、ある日突然発症し、その後の人生を大きく変えてしまう病気です。従って予防が大切ですし、発症前に自分の脳の状態を把握しておくことも重要です。

脳卒中の症状

脳卒中は、「意識を失って倒れる病気」とイメージされる方も多いのですが、病態によって症状はさまざまです。

脳梗塞脳出血、くも膜下出血
手足の麻痺、感覚の異常
顔がゆがむ
言葉が上手く話せない
突然の強い頭痛、吐き気
意識が無くなる

脳の障害は時間とともに拡がり悪化します。障害が大きくなると後遺症も重度となり、命の危険も高まります。もし、このような症状が出た場合は、一刻も早く救急車を呼んでください。

脳卒中の種類

脳梗塞

脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、脳細胞に血流が届かなくなる病気です。十分な血流が届かないと、脳細胞は死滅してしまいます。

脳梗塞は、脳卒中の約7割を占めますが、大きく3種類に分かれます。

  • ラクナ梗塞
  • アテローム性血栓性脳梗塞
  • 心原性脳梗塞
脳梗塞の内訳

脳梗塞には前兆がないことも多いのですが、一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれる、一時的な麻痺や視野障害が前兆として出現することがあります。数分から数時間で治まることもあり、軽く考えて放置してしまう場合もしばしばありますが、とくに高血圧や糖尿病などのリスクがある方は、早急に医療機関へ受診してください。

脳梗塞の治療

治療の選択肢は、発症からの時間経過によって変わってきます。

  • t-PAによる血栓溶解療法:発症4.5時間以内であればt-PAという、血栓を溶かす薬を注射します。ただし初期対応やMRIでの診断等にある程度の時間がかかるため、この治療を受けるには少なくとも3.5時間以内に病院に着いている必要があります。
  • 血管内治療:t-PAによる血栓溶解療法は有効な治療方法ですが、発症から4.5時間以内に治療を開始しなければならないという時間的制約があります。一方で、発症から6~24時間経過しても生き残っている脳細胞があることもわかっており、発症後24時間以内であれば脳血管内治療を検討することになります。
  • 薬物治療:それぞれの病態に応じた抗血栓薬や脳保護薬で治療を行います。
脳梗塞治療のイメージ

脳出血

脳梗塞治療のイメージ

脳出血は、主に脳の中の細い動脈が破綻して出血し、形成された血腫が脳を圧迫することで、脳が破壊される病気です。

脳卒中の約2割を占め、突然、手足のしびれや麻痺、意識障害などがあらわれます。

もっとも多い原因は高血圧です。高血圧状態が長く続くことで動脈硬化が進行し、脆弱化した小血管が破綻して出血してしまいます。

その他、血管腫や動静脈奇形、硬膜動静脈ろう、脳腫瘍などが原因となることがあります。これらの多くは、MRIなどを用いて脳の状態を検査することで予防できます。

脳出血の治療

保存的治療が中心となります。
高血圧が原因のことも多いので、降圧薬を投与します。また、出血を止めるために止血剤を投与することもあります。

脳出血によって脳が圧迫されますので、浮腫をとるための薬剤を投与します。

出血量が多い場合は、命にかかわる事もあるため、頭蓋骨を外して血腫を取り除く手術を行うこともあります。

くも膜下出血

くも膜下出血のイメージ

くも膜下出血は、脳動脈瘤や動静脈奇形が突然破裂することで起こります。

脳動脈瘤は血管の分岐部の脆弱な部分に発生します。嚢状動脈瘤の壁は薄く弱いため、ときに破裂し、くも膜下出血を起こします。

くも膜下出血は脳や髄膜を刺激して、「ある日突然、今までに経験したこともないような激しい頭痛や嘔吐」が起こります。

また、脳内圧が異常に上昇することで血流が流れなくなり、そのため失神などの意識障害を起こすこともあります。

くも膜下出血のほかに、脳実質内の脳出血を伴うこともあり、意識障害が遷延したり、手足の麻痺や言語障害を伴う場合もあります。

くも膜下出血の治療

脳浮腫や高血圧に対する薬物療法が行われますが、再破裂は致死的となるため、手術治療を検討する必要があります。

  • 開頭クリッピング手術:頭蓋骨を外して、脳動脈瘤の根本をクリップで挟む治療です。 開頭クリッピング手術のイメージ
  • 血管内コイル塞栓術:脳動脈瘤の中部に細い金属製のコイルを入れて、脳動脈瘤全体を塞いでしまう治療です。カテーテルによる血管内治療です。 血管内コイル塞栓術のイメージ

脳卒中の検査と診断

脳卒中が疑われる場合は、CTやMRI、血管造影を行い診断を確定します。クリニックでは行えない検査については、専門施設へ紹介させていただきます。

CT検査

X線撮影をコンピュータで解析して脳の断層像を映し出します。脳出血の診断には非常に有用ですが、脳梗塞の場合は発症から24時間以上経たないと、はっきり描画できません。

MRI・MRA検査

MRI(磁気共鳴画像撮影)とは、電磁気の力を利用して体の内部を撮影する装置です。脳梗塞、脳出血の診断に有用です。MRA検査は脳血管を描出でき、閉塞血管や脳動脈瘤の診断に有用です。

血管造影検査

カテーテルという細長い管を挿入し、造影剤を注射してX線撮影を行います。頸動脈や脳動脈の狭窄や閉塞の程度、部位、などが正確な評価が出来る検査です。検査に引き続いてその場でカテーテル治療を行う場合もあります。

超音波検査

超音波を使って頸動脈の状態を探る検査です。狭窄や閉塞がないか調べることができます。さらにドップラー検査を追加すると血流の状態を詳しく調べることができます。クリニックでも行える検査です。

脳卒中の予防

脳梗塞を含む脳卒中の再発率は、年間約5%といわれており、10年間で約半数の患者が再発したというデータもあるほど再発率の高い病気です。発症予防、再発予防の取り組みが非常に大事になります。

再発リスクを含む脳梗塞発症リスクには以下のようなものがあげられます。

  1. 高血圧高血圧はこちら
  2. 糖尿病糖尿病はこちら
  3. 脂質異常症脂質異常症はこちら
  4. 心房細動心房細動はこちら
  5. 喫煙禁煙外来はこちら
  6. 肥満栄養指導はこちら

生活習慣を見直しつつ、適宜薬物治療も行って、動脈硬化の予防に努めましょう。