予防接種によって免疫を獲得すると、その人の感染症の発症あるいは重症化を予防することができます。また、多くの人が予防接種を受けることで免疫を獲得していると、感染している方が出ても流行を阻止することができる「集団免疫効果」が発揮されます。またワクチンを接種することができない人を守ることにもつながります。

予防接種をご希望の方へ

当院では各種予防接種を行っております。
予防接種はスムーズな対応ができるよう予約制です。
ご予約はWEB予約より承っております。

WEB予約

インフルエンザワクチン

予防接種の目的は、「発症と重症化の予防」です。インフルエンザに絶対に罹らないわけではありません。高齢者や基礎疾患がある方は、インフルエンザによって咽頭や気道に炎症が起こることで、体の防御機能が弱まって、細菌に感染しやすくなり、時に致命的になります。
当院では3歳以上の方にワクチン接種を行っております。
インフルエンザワクチンは、

6か月以上3歳未満の方1回0.25ml2回接種
(4週間以上空けて)
3歳以上13歳未満の方1回0.5ml2回接種
(4週間以上空けて)
13歳以上の方1回0.5ml1回接種

となっております。3歳未満の方については小児科での接種をお願いしております。

インフルエンザワクチンの接種時期

インフルエンザは例年12月中旬から3月下旬まで流行することが多いので、体内で抗体が作られて効果を発揮するまでの期間を考慮して、ワクチンは10月中旬から12月下旬までに接種することが望ましいです。

インフルエンザワクチンの予防効果

インフルエンザは、口や鼻、眼の粘膜での飛沫あるいは接触感染によって感染しますが、ワクチンはこの感染を完全に防ぐことはできません。ウイルスが増殖すると、数日の潜伏期間を経て、発熱や喉の痛みといったインフルエンザの症状が出現し発病します。インフルエンザワクチンには、この「発病」を抑える効果が認められています。

  • 米国の研究では、インフルエンザワクチンを接種することで、インフルエンザで医療機関に受診するリスクが40~60%減少すると報告されています。
  • 国内の研究でも、65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者について34~55%の発病を阻止したと報告されています。
    また、インフルエンザでは肺炎や脳症等の重い合併症を起こし死亡される方もいます。インフルエンザワクチンには、こうした「重症化」を予防する効果も認められています。
  • 最近の研究では、インフルエンザワクチンを受けていると、その後インフルエンザで入院したとしても集中治療室(ICU)への入室リスクが26%低く、インフルエンザによる死亡のリスクが31%低いとする報告があります。

インフルエンザ予防接種は毎年の接種が望ましい

インフルエンザワクチンは、シーズン毎に流行しそうなウイルスを用いて製造されます。昨年接種された場合でも今年のインフルエンザワクチン接種を行いましょう。

インフルエンザはウイルスの表面に、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という2種類の蛋白質を持っています。とくにインフルエンザA型は、HAが16種類、NAが9種類もあるため、144通りもの組み合わせがあります。

どのタイプが流行するかを世界保健機関(WHO)が世界各地の情報から予測し、それに基づいて日本でもワクチンのタイプを決定して製造されるため、毎年異なるワクチンとなるのです。

インフルエンザワクチンの製造方法

インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスを卵に投与して、卵の中でウイルスを増殖させることで製造します。卵を処理して殺菌し、ウイルスの殻(HA)のみを抽出します。

卵アレルギーがある場合のワクチン接種

卵アレルギーがある場合でも基本的には安全に打つことができます。
インフルエンザワクチンは鶏卵を利用して製造されるため、卵アレルギーがある人は注意が必要と記載されています。しかし製造過程での処理によって、本当に微量な卵の成分しか含まれていません。実際に卵加工食品を食べても問題ない方では、接種後の卵アレルギーによる重篤な副反応の報告はありません。

しかし、卵加工製品を少しでも食べたらアレルギー症状が起こるような場合や、アナフィラキシーの経験がある場合は、慎重な対応が望まれます。

妊娠している場合のインフルエンザ予防接種

妊娠されている方は、インフルエンザ予防接種が推奨されています。
海外の例では、妊娠されている方がインフルエンザに罹患すると重症化リスクが高いとの報告があり、WHO(世界保健機関)でも妊娠している方をワクチン接種の優先対象としています。

妊娠中や出産直後にインフルエンザに罹ってしまう方と高熱で体調を崩してしまい、母体・赤ちゃんの両方に辛い影響があります。赤ちゃんを守るためにもぜひインフルエンザ予防接種を受けてください。

予防接種前にインフルエンザに罹患した場合

「インフルエンザに今年はもう罹ったから、ワクチンは打たなくて大丈夫」と考える方がいます。しかしインフルエンザには様々なタイプがあり、またそのシーズンによって流行するタイプも変わってきます。実際同じシーズンに、2回、3回インフルエンザに罹患する方もしばしば見かけます。インフルエンザに1度罹患した方も体調が改善したら予防接種をご検討ください。

インフルエンザワクチンの副反応

一番多い副作用が、注射部位の反応です。

  • 発赤
  • 腫脹
  • 疼痛

などの反応が、接種を受けた方の10~20%に起こりますが、通常2~3日で消失します。
全身の反応としては、

  • 発熱
  • 頭痛
  • 悪寒や倦怠感

などの反応が、接種を受けた方の5~10%に起こり、通常2~3日で消失します。ごくまれに、アナフィラキシー症状(発疹、蕁麻疹、掻痒感、呼吸困難、等)が起こることがあります。アナフィラキシーは通常接種後30分以内におこることが多いので、この間は注意して観察しましょう。

インフルエンザ予防接種後に控える行動

  • 運動や飲酒は、接種後24時間は控えましょう。
  • 歯科での抜歯などの処置も接種後24時間はお控えください。
  • お風呂は大丈夫ですが、接種した部位を強く擦るのは避けましょう。

インフルエンザワクチンの助成制度

川崎市では高齢者を対象とした定期のインフルエンザ予防接種があります。実施期間と回数に制限があります。

対象は下記の通りです。

  • 川崎市にお住まいの方
  • 65歳以上の方あるいは60歳~65未満の方で
    • 心臓、腎臓、呼吸器の機能障害(障害1級程度)のある方
    • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(障害1級程度)のある方
  • 接種を受けようとするご本人が接種を希望していること

住所・氏名・年齢を確認できるもの(健康保険証、運転免許証など)。
60歳~65歳未満の方は、身体障害者手帳や診断書など、障害の程度を確認できる書類をお持ちください。

よくある質問(FAQ) インフルエンザ予防接種についての補助はありますか

肺炎球菌ワクチン

肺炎は、日本人の死因の第5位(2023年)にあたります。直接の死因にならなくても、悪性新生物、心疾患、老衰、脳血管疾患といった他の死因に影響し、予後を悪化させます。

肺炎の原因には、細菌やウイルス等がありますが、そのうち最も重症なものが肺炎球菌です。市中肺炎の約3割の原因菌であり、毒性も強いため重症例もしばしば見られます。

若い人に比べ高齢者の肺炎では、症状が分かりにくい場合があります。発熱や咳などは見られず、何となく元気がない、食欲がないといった様子で、肺炎と気付かないうちに重症化が進み、突然呼吸困難に陥ることがあります。

肺炎の治療には抗生剤が用いられますが、高齢者や基礎疾患のある方は、抗生剤の投与にかかわらず重篤化することがあります。そのため予防が重要なのです。

肺炎球菌ワクチンの種類

日本で使用可能な肺炎球菌ワクチンには

  • ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)
  • バクニュバンス(沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン)
  • プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)

の3種類があります。

肺炎球菌には約90種類の型があり、全てを予防できるわけではありませんが、それぞれ頻度の高い型を予防します。概ね肺炎球菌性肺炎の30~45%程度の予防効果があります。

厚生労働省が定期接種として推奨しているのはニューモバックスNPで、接種日に65歳の方には公費が適応されます。

高齢者の方は自費にはなりますが、バクニュバンスやプレベナーを併用することでブースター効果がかかり予防効果が高まります。

ワクチンは、どちらがより良いといったデータはありません。また片方の注射を打ってから半年から1年空ければもう片方のワクチンを接種することが可能となります。

 ニューモバックスNPバクニュバンスプレベナー13
含有抗原の数23種類15種類13種類
ワクチンの種類莢膜ポリサッカライドワクチン結合型ワクチン結合型ワクチン
免疫を上げる力比較的弱め強い強い
免疫の持続性5年で減弱長い長い
再接種の必要性5年以上あけて再接種不要不要
費用助成の有無ありなしなし
対象年齢2歳以上全年齢全年齢
接種方法 皮下注射または筋肉注射 筋肉注射 筋肉注射

2種類のワクチンを組み合わせて接種する場合のスケジュール

  • ニューモバックスから接種する方
    ニューモバックス→(1年以上空けて)プレベナー13またはバクニュバンス
    →(6ヶ月~4年後)ニューモバックス
  • 15価もしくは13価ワクチンから接種する方
    プレベナー13またはバクニュバンス→(6ヶ月〜4年後)ニューモバックス

肺炎球菌ワクチン接種が勧められる方

  • 65歳以上の高齢者
  • 慢性的な心疾患、肺疾患、肝疾患、または腎疾患を患っている方
  • 糖尿病がある方
  • 基礎疾患や治療により免疫不全状態である方
  • 生まれつき脾臓がない、あるいは脾摘手術を受けた方
  • 鎌状赤血球症や、その他の異常ヘモグロビン症
  • 人工内耳の装用、慢性髄液漏等で生体防御能が低下している方
  • 医師が本剤の接種を必要と認めた者

1つのワクチンだけでも効果はありますが、可能であれば2種類のワクチン接種をお勧めします。13価や15価ワクチンによって免疫記憶が形成され、23価ワクチンで広くカバーすることで、肺炎にかかるリスクを減らすことができます。

公費のタイミングで打つと打ちやすいかもしれません。公費のタイミングを逃してしまった場合は、13価や15価ワクチンから打つと良いでしょう。

肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種について

通常、肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種せず6日以上の間隔をあけて接種します。ただし、医師が必要と認めた場合には同時接種することが可能です。肺炎球菌とインフルエンザワクチンの同時接種を希望される方は、医師へご相談ください。

肺炎球菌ワクチンの副反応

一番多い副作用が、注射部位の反応です。

  • 発赤
  • 腫脹
  • 疼痛

などの反応が起こることがありますが、通常2~3日で消失します。

  • 発熱
  • 頭痛
  • 悪寒や倦怠感

などの全身反応についても通常2~3日で消失します。ごくまれに、アナフィラキシー症状(発疹、蕁麻疹、掻痒感、呼吸困難、等)が起こることがあります。アナフィラキシーは通常接種後30分以内におこることが多いので、この間は注意して観察しましょう。

RSウイルスワクチン

RSウイルスワクチンのイメージ

RSウイルスは、すべての年齢層で上気道炎や気管支炎、肺炎を引き起こす代表的な呼吸器ウイルスです。乳幼児がかかる病気として広く知られていますが、慢性呼吸器・心疾患を合併する高齢者では重篤な肺炎を引き起こし、入院・死亡の原因となることがあります。

日本では、60歳以上の方のRSウイルスによる急性呼吸器感染症は年間約70万件と推定されており、このうち入院が約6.3万件、院内死亡が約4500人と推定されています。

下記の基礎疾患がある方は重症化リスクが高く特に注意が必要です。

  • 糖尿病
  • 喘息
  • COPD
  • 冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)
  • うっ血性心不全

基礎疾患がある高齢者がRSウイルス感染症で入院した場合、インフルエンザと比較して肺炎を起こしやすく、喘息やCOPD、心血管疾患合併症も増悪し、入院期間が長くなることが示されています。

RSウイルス感染症に特に有効な治療法はなく、症状を緩和する対処療法が中心となります。必要に応じて解熱剤や去痰剤を行い、呼吸困難が悪化し入院になれば、酸素吸入や循環確保のための点滴を行いますが、とくに高齢者においては予防が非常に重要です。

RSウイルスワクチンの種類

現在、RSウイルスに対するワクチンとしては、

  • アレックスビー(GSK社)
  • アブリスボ(ファイザー社)

の2種類があります。

どちらのワクチンが優れているというデータはありません。RSウイルス感染症の発症を抑える効果としては、ワクチンの有効性は約65~80%程度です。重症化した場合には一定数亡くなる方がいるにも関わらず、有効な治療法がないことを考えると、肺疾患や心臓疾患のある高齢者の方は、ワクチン接種を検討してもよいでしょう。

 アレックスビーアブリスボ
製薬会社GSKファイザー
ワクチンの種類1価の癒合前F蛋白抗原
+
アジュバント
2価の癒合前F蛋白抗原
投与対象60歳以上60歳以上
妊婦
接種方法筋肉注射筋肉注射

RSウイルスワクチンの副反応

一番多い副作用が、注射部位の反応です。

  • 紅斑
  • 腫脹
  • 疼痛

などの反応が起こりますが、通常2~3日で消失します。
全身の反応としては、

  • 発熱
  • 頭痛
  • 疲労
  • 筋肉痛・関節痛

などの反応が、接種を受けた方の20~30%に起こり、数日で消失します。ごくまれに、アナフィラキシー症状(発疹、蕁麻疹、掻痒感、呼吸困難、等)が起こるリスクはありますが、その他重篤な合併症は報告されていません。

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹のイメージ

帯状疱疹は、水疱を伴う発疹が皮膚の神経に沿って帯状に出現する病気です。水疱が見られる2~3日前から痒みや痛みが出始め、その後1週間程度で水疱が見られ、発熱、頭痛といった症状も伴うことがあります。通常、皮膚症状は2~4週間でおさまります。

帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルスです。

子どもの頃に水痘(みずぼうそう)にかかると、水痘・帯状疱疹ウイルスが体の中に潜伏し、加齢や疲労などで免疫が低下した際などに「帯状疱疹」として発症します。

原因となる水痘・帯状疱疹ウイルスに対しては、成人の9割以上が抗体を持っていることから、既にほとんどの人が感染していると考えられ、誰もが帯状疱疹を発症するリスクがあります。

帯状疱疹は、皮膚症状が治った後も長く痛みが続く帯状疱疹後神経痛(PHN)によって苦しむ方も少なくないことから、ワクチンによる予防が大切なのです。

帯状疱疹は年齢とともに発症しやすくなる

帯状発疹の発症率は50歳頃から上昇します。80歳までに3人に1人が帯状疱疹を経験するという推定もあります。加齢に伴う免疫の低下が原因と考えられています。

帯状疱疹は、一度発症した後も約6%の方で再発が起こりえます。加齢や疲労、または免疫に異常をきたす疾患(膠原病、SLE、等)で再発しやすいことが報告されています。

帯状疱疹は、みずぼうそうとして人にうつすことがある

帯状疱疹の水疱の中にはウイルスが存在しています。水ぼうそうになったことのない人に、帯状疱疹としてうつることはありません。

しかし接触感染によって、水ぼうそうになったことのない子どもや赤ちゃんにうつる可能性があり、うつしてしまうと水ぼうそうを発症します。

乳児や妊婦は水ぼうそうが重症化するリスクが高く、とくに妊娠中に発症した場合には、先天性水痘症候群の赤ちゃんが出生することがあります。

帯状疱疹を発症した方は特に赤ちゃんや妊婦との接触は避けるべきです。

後遺症:帯状疱疹後神経痛(PHN)について

帯状疱疹で頻度の高い後遺症に、帯状疱疹後神経痛(PHN)があります。皮膚症状が治った後も「焼けるような」「締め付けるような」痛みがあったり、「ズキンズキン」と疼くような痛み、そして、軽く触れるだけでも痛む「アロディニア」と呼ばれる痛みなど様々な痛みがあり、睡眠や日常生活に支障をきたすことがあります。帯状疱疹後に神経の障害が残ることによって起こる痛みと考えられています。

帯状疱疹後神経痛のイメージ

その他の合併症

  • 視力低下・失明

    鼻や目の周囲に帯状疱疹が起きると、角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などが起きることがあり、視力低下や失明に至ることもあります。

  • ラムゼイ・ハント症候群 ラムゼイ・ハント症候群のイメージ

    水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で起こる顔面神経麻痺を症状とする疾患です。耳介に帯状疱疹が現れて、強い耳の痛みや耳鳴や難聴、めまいを起こすこともあります。

    顔面神経麻痺は、ある日突然、顔がうまく動かなくなります。目や口が閉じない、左右の眉の高さが違う、顔がゆがむ、口角が下がって口から飲み物が漏れるといった症状が現れます。

    顔半分が引きつれた状態が残ったり、目をつぶると一緒に口元が動いたりする病的共同運動という後遺症が残ることがあります。

ワクチンの種類

帯状疱疹ワクチンには「弱毒生水痘ワクチン」と「不活化ワクチン」の2種類があり、費用や予防効果が異なります。

 乾燥弱毒生水痘ワクチン
ビケン
シングリックス
種類生ワクチン不活化ワクチン
対象50歳以上18歳以上
接種回数1回2回(2~6か月後)
費用約1万円x1回2万4千円x2回
接種方法皮下注射筋肉注射
発症予防効果69.8%96.6%
PHN発症予防効果66.5%88.8%
持続性5年程度10年以上

接種回数や費用については弱毒生水痘ワクチン(ビケン)が有利になります。また、投与部位の反応についても、シングリックスの方が強いとされています。

一方で、帯状疱疹の発症予防、PHNの発症予防は、シングリックスで非常に高く、50歳以上の成人では、少なくとも10年間は80%を超える有効性が確認されています。

予防接種の目的である発症および重症化予防、帯状疱疹後神経痛(PHN)の症状軽減を考えると、シングリックスをお勧めします。ただ接種を2回受ける必要があり、値段も高いためライフスタイルに合わせた選択をしましょう。どちらにしようか決めかねている場合は、ぜひ一度ご相談ください。

HPVワクチン

日本では、毎年約1万人以上が子宮頸がんを発症し、毎年約3千人が亡くなっている病気です。最近は20~30歳代の若い女性に増えており、30歳代後半がピークとなっています。

子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が原因であることがわかっています。女性の多くが一生に一度はHPVに感染すると言われています。HPVに感染しても、ほとんどの方は免疫によって排除されますが、約10%の人ではHPV感染が持続します。このうち自然治癒しない一部の人は異形成とよばれる前がん病変を経て、子宮頸がんに進行します。

HPVワクチンは、そのうちの子宮頸がんを起こしやすい一部のHPVの感染を防ぐことができます。

子宮頸がんのイメージ

HPVワクチンの効果

HPVワクチンの子宮頸がんの予防効果は世界的に証明されています。2020年のスウェーデンでの研究によると、4価HPVワクチン接種によって子宮頸がん発症が63%減少し、とくに17歳未満の接種で88%減少することが示されています。

日本の研究でも、の前がん病変である中等度異形成以上の病変が減少し、治療を要する高度異形成以上の病変の減少も認められています。

HPVワクチンの種類

HPVワクチンは2価(サーバリックス)、4価(ガーダシル)、9価(シルガード9)の3種類があり、いずれも公費接種(無料)が可能です。当院での接種はガーダシルとシルガード9です。

HPVワクチンの副反応

HPVワクチン接種後に見られる主な副反応としては、発熱や接種した部位の痛みや腫れ、注射への恐怖や興奮などをきっかけとした失神などが挙げられます。

発生頻度4価(ガーダシル)9価(シルガード9)
50%以上接種部位の疼痛接種部位の疼痛
10~50%紅斑、腫脹紅斑、腫脹、頭痛
1~10%頭痛、発熱、掻痒感めまい、悪心、下痢、発熱、掻痒感など
1%未満下痢、腹痛、四肢痛、筋骨格硬直、不快感、倦怠感、硬結など下痢、腹痛、四肢痛、筋骨格硬直、不快感、倦怠感、硬結など
頻度不明失神、嘔吐、関節痛、筋肉痛感覚麻痺、失神、四肢痛

ごく稀に起こる重い症状としては

  • アナフィラキシー:約96万接種に1回
  • ギランバレー症候群:約430万接種に1回
  • 急性散在性脳脊髄炎(ADEM):約430万接種に1回
  • 複合性局所疼痛症候群(CRPS):約860万接種に1回

などが報告されていますが、極めて稀です。

過去にHPVワクチン接種後の女子に見られた運動障害や、慢性的な体の痛みなどの様々な症状がメディアで繰り返し報道されました。これらの症状の多くは、HPVワクチン接種そのものというよりも、接種に伴う痛みや接種前後のストレスが原因と考えられています。接種後に心配な症状がある場合には、まず接種を受けた医療機関に相談しましょう。

HPVワクチンの対象者

小学校6年から高校1年生相当の女子です。また、対象年齢を過ぎた方であっても、平成9(1997)年4月2日以降に生まれた女子は、令和7(2025)年3月31日まで対象となります。

救済措置(キャッチアップ接種)

HPVワクチンは、平成25年6月14日付け厚生労働省通知に基づき、これまで積極的な接種勧奨を差し控えてきましたが、令和3年11月26日付で厚生労働省は同通知を廃止し、個別勧奨を再開することを決定しました。

積極的勧奨が差し控えられていたことにより接種の機会を逃した方への救済措置として、公費による接種機会が提供されています。

  1. 対象者:接種日時点で川崎市に住民登録がある方で下記の方
    • 平成9年度生まれ~平成18年度生まれ(平成9(1997)年4月2日~平成19(2007)年4月1日)の女性で、過去に子宮頸がん予防ワクチンを合計3回受けていない方。
    • 救済措置の実施期間中に定期接種の対象から外れる世代である平成19年度生まれの方
    • 1回目又は2回目の接種で中断してしまった方は、初回からやり直すことなく残りの回数を接種(2・3回目又は3回目)してください。
  2. 実施期間
    令和4年4月1日~令和7年3月31日まで

HPVワクチンの接種回数・接種間隔

  1. 1回目接種時点で15歳未満の場合
    接種回数は2回です。
    推奨される接種間隔は6か月間です。
    (公費の接種に最低限必要な間隔は、5か月間空ける必要があります。)
  2. 1回目接種時点で15歳以上の場合
    接種回数は3回です。
    推奨される接種間隔は1回目から数えて、2回目が2か月目、3回目が6か月目です。(公費の接種に最低限必要な間隔は、1回目と2回目の間に1か月間、2回目と3回目の間に3か月間空ける必要があります。)

異なる種類のワクチンを接種する際の接種間隔

近年、ワクチンの種類が増えてきており接種回数も多くなるため、やや複雑に感じる方もいると思います。ワクチンの同時接種で効率よく免疫を獲得することも1つの方法です。

注射生ワクチンを除く、ワクチンの同時接種は日本でも行われるようになっています。一般に、同時接種によって副反応が増えることはないとされています。

  • 「注射生ワクチン」の接種後27日以上の間隔をおかなければ、「注射生ワクチン」の接種を受けることはできません。
  • 「新型コロナワクチン」と、インフルエンザワクチン以外のワクチンの接種間隔は13日以上空けることとしています。

予防接種一覧と費用について

(すべて税込み表記です)
麻疹風疹混合(MR)ワクチン(川崎市 風しん予防事業)3,200円
麻疹風疹混合(MR)ワクチン12,100円
水痘帯状疱疹ワクチン(従来の弱毒ワクチン)9,500円
水痘帯状疱疹ワクチン(シングリックス)24,200円
ムンプス(おたふくかぜ)ワクチン9,350円
インフルエンザワクチン(3歳から13歳未満)3,300円
インフルエンザワクチン(13歳以上)3,300円
インフルエンザワクチン(川崎市にお住まいの65歳以上の方)2,300円
成人用肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)(川崎市 高齢者を対象とした定期の予防接種)4,500円
成人用肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)(任意接種)8,800円
成人用肺炎球菌ワクチン(バクニュバンス)(任意接種)11,000円
成人用肺炎球菌ワクチン(プレベナー)(任意接種)11,000円
RSウイルスワクチン(アレックスビー)26,400円
HPVワクチン(公費対象者)無料
HPVワクチン(シルガード9)27,500円
HPVワクチン(ガーダシル)16,500円
A型肝炎8,800円
B型肝炎5,500円
日本脳炎6,600円
破傷風トキソイド4,400円

川崎市が行う予防接種事業について