膀胱炎とは
膀胱炎は、多くは膀胱の細菌感染によって引き起こされる膀胱の炎症です。
- 排尿痛
- 頻尿、尿意切迫
- 残尿感
- 下腹部痛
- 尿の混濁、血尿
などの症状がみられます。発熱はあっても軽微なことが多いです。
膀胱炎の原因
20~40代の女性に多いとされますが、50代以降の方も女性ホルモンが低下するため、膣の常在菌である乳酸菌が減少し、直腸内の細菌が侵入しやすくなり、罹患することが多くなります。
膀胱炎の多くは、大腸菌などの細菌が、尿道からさかのぼって膀胱に侵入し増殖することで起こります。逆行性感染と呼ばれます。
尿道口は肛門や膣にとても近い位置にあります。しかも女性の場合は男性に比べて尿道の長さが3~4cmと短く、細菌が膀胱に侵入しやすいのです。そのため、膀胱炎は特に女性に多いのです。
膀胱炎は、原因によって5種類程度に分けられます。
単純性膀胱炎
尿路に異常が無い方に起こる感染性の膀胱炎です。女性では尿意を我慢したり、冷えやストレス・性交渉などによって起こります。
月経や妊娠によって誘発されることもあります。
複雑性膀胱炎
尿路の異常や、基礎疾患がある方に起こりやすい膀胱炎です。
原因が改善されなければ繰り返し起こりやすいです。
尿路の異常による尿停滞、カテーテルなどの異物、尿路周囲の癌、前立腺肥大症などが基礎疾患となることが多いです。
出血性膀胱炎
血尿を伴う膀胱炎です。
ウイルスや細菌、薬剤などが原因になりえます。抗がん剤や免疫抑制薬のほか、抗菌薬、漢方薬などでおこることもあります。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は、慢性的な痛みや圧迫感、不快感があり、尿意亢進や頻尿などの膀胱炎症状があるものの、明らかな原因がない膀胱炎です。
罹患率は0.01~2.3%程度と推定される稀な病気で、日本では約4,500人の方が罹患されているとされます。
免疫反応や炎症が重要と考えられ、シェーグレン症候群、その他の膠原病、過敏性腸症候群、線維筋痛症などが合併することが多いようです。
診断には膀胱内視鏡検査が必要となりますので、間質性膀胱炎を疑う場合には泌尿器科へ紹介させていただきます。
放射線性膀胱炎
骨盤内への放射線照射の影響で起きる膀胱炎です。放射線治療から数年から10年以上たって発症することもあります。
膀胱内視鏡検査が必要になります。
前立腺、膀胱、子宮、卵巣のがんに対する放射線治療を行われた方で、排尿時痛、血尿、残尿感などあるようでしたら、泌尿器科専門医へ紹介させていただきます。
膀胱炎の検査
①尿検査
尿迅速検査は、尿を分析し、細菌、白血球、赤血球などを検出する検査です。健康診断でも行いますが、当院でも当日に尿の分析ができる機器を使用しています。
特に重要な指標は以下になります。
- 尿中の白血球
- 亜硝酸塩
尿中の白血球数は、膀胱で細菌と免疫細胞が戦っている状態を表し、膀胱炎の可能性を疑います。
亜硝酸塩は、食物中の硝酸が尿中の細菌によって還元された物質です。通常の尿からは検出されませんが、膀胱炎などで尿中に細菌がいると亜硝酸塩が検出されます。
②尿培要検査
感染を引き起こしている可能性のある細菌を特定し、最も効果的な抗生物質を選択するために重要な検査です。
高齢者や複雑性膀胱炎の場合、抗生剤が効かない、ということもしばしば経験します。
尿培養検査を行うことで、どの抗生剤が効くかを判定し、治療につなげることができます。
③超音波検査
膀胱炎を繰り返す場合やその他下腹部の症状が続く場合は、膀胱やその他周辺臓器の状態を探るために超音波検査を行います。
腎結石、膀胱結石、腫瘍など、膀胱に関する病気の発見に役立ちます。超音波検査は被曝のない検査ですので、安心して受けていただけます。
④CT/MRI検査
腎臓、尿管、膀胱などの尿路の状態やその周囲にある構造物を検査します。造影剤を静脈内に投与することで、より詳しく評価することができます。ただし被曝のリスクがあります。
原因不明の血尿や下腹部痛などの症状が長く続き、超音波検査では十分評価できない場合や、より精密な検査が必要な場合に検討します。
⑤膀胱内視鏡検査
膀胱の状態を内部から観察できる検査です。尿道から特殊な内視鏡を入れて直接膀胱内部を観察します。
膀胱以外にも尿道や前立腺肥大の状態を調べることができます。膀胱がんや膀胱結石、前立腺肥大症、尿道狭窄症、間質性膀胱炎などの評価に有用です。
泌尿器科の専門施設で施行いただく検査になります。
膀胱炎の治療
単純性膀胱炎
原因菌に対して有効な抗生物質を投与します。
複雑性膀胱炎
原因菌に対して有効な抗生物質を投与します。膀胱炎を起こしやすくしている病態や基礎疾患についても精密検査や治療を行います。
出血性膀胱炎
原因にもよりますが、自然に治ることが多い病気です。
- 安静にして休養をよくとり、十分な水分補給を指示します。
- 細菌感染が疑われる場合には抗生物質を投与します。
- 出血量が多い場合には内視鏡で焼灼していただくこともあります。
- 再発を繰り返したり、治らない場合には膀胱がんなどの可能性を考えます。
間質性膀胱炎
原因不明の病気ですので、治療は対処療法になります。抗うつ薬や抗ヒスタミン薬などを併用して様子をみることがあります。